ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「でも俺、…ずっと青石さんと話してみたかった」
スマートフォンに入った、新しい名前。
こんなにも嬉しくてドキドキする名前は初めてだった。
「とくに用がなくてもメールしてもいい…?」
どこか驚いた表情をさせてから、眉を寄せてうなずいた浅倉くん。
「…すぐ返信できるか分かんないけど」
「こ、声が聞きたくなったら…電話とか、いいのかな…?」
「……できるときは、必ず受け取れるようにする」
「あっ、ありがとう…!」
それって、それって…。
付き合ってるってことで、いいんだよね…?
彼氏と彼女って自惚れても許されるってことだよね…?
「……青石さんはさ、」
人体模型、飾られた生き物の剥製(はくせい)、棚に並んだ難しそうな書類。
どうして先生の許可が下りたのかと不明なまま、生物準備室で過ごすお昼休み。
「…もし本当に…俺の身体が動かなくなっても───……、」
ぎゃははっと、教室の前を生徒たちが通った。
「え…?」
「いや、…なんでもない」
スッと、お弁当に視線を落とした浅倉くん。
「…食べよ」
「あっ、うん!」
私、青石 李衣。
高校1年生の16歳にして。
なんと王様ゲームで初めての彼氏ができてしまいました───。