ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




「っ…、ぅぅ…っ、ぁぁぁぁ……っ、ぅぁぁぁーーー…っ」



息が詰まってしまうくらい、崩れ落ちてしまうくらい、声をあげて泣いた。

この涙は、この涙だけは、千隼くんには見せることができないものだ。



「……あおいし、」


「うぅぅ…っ、ぁぁぁぁーーーっ…」



こんなふうに泣きたいのは私じゃないのに。

彼はいつもいつも強すぎて、どうしてって逆に責めたくなるくらい。


私の前で病気を恨んだこともなかった。

どうして俺なんだって、それすら言ったこともなかった。



「変わって、あげたい…っ」


「…うん」


「でもっ、そう言うと千隼くんは…怒る、から…っ、」


「うん」


「だからせめて、分けあってあげたいのに…、それすら…千隼くんはさせてくれないから……っ」



きれいごと、綺麗事にしかならないよ。

どんなに私が言ったって、彼以外の人間が何を言ったところで、結局は綺麗事にしかならない。


でもそんな綺麗事だとしても、私はせめて言ってあげたいんだよ。


だってそれくらい、それくらいしか、私にはできないんだもん。



「ボールっ、ボール…っ、くらう…っ」


「ボール…?」


「顔にいっぱい、食らうから……っ、」



千隼くんを追いかけた先の痛みがサッカーボールならば、私は何回だって顔面で受け止めてみせる。

それで彼の苦しみを分けてもらえるならば、私は毎日だって、1秒ごとにだって、なんだっていいから受ける。



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