ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
服も、メイクも、髪の毛も。
それはぜんぶ浅倉のためなんだろう。
俺は半ば強引にもアイスを口に含んで溶かした。
「北條は進路、決まったの」
「俺?俺はまあ…、無難なとこ受けるつもり」
「…そう」
浅倉は?とは、聞けない。
静かになってしまった空気を和らげるのは、学校ではいつも俺の役目だったが。
「李衣?」
「アイス、溶けちゃうよっ」
この日は青石が浅倉へとすり寄ったことで終わりを告げた。
そんな笑顔を守れるのはやっぱり浅倉だけなんだと、俺はどこか悔しくありつつもホッとした。
あの日、生物準備室でひとり泣いていたとき。
青石が求めていたのは俺ではなく、ずっと浅倉だったこと。
「俺も通信制の大学、受けようと思ってて」
「えっ…」
本当ならお前は頭も良かったから、わりと良い大学に行けたんじゃねーのか浅倉。
なんて思っていると、浅倉の口から前向きな言葉が飛び出して。
俺と青石は思わず立ち上がりそうな勢いで反応してしまった。
「いつも病院ですることなくて勉強ばっかやってたら、なんかみんなして勧めてきてさ」
「うん…!きっと千隼くんならすぐ受かるね…!」
「まじ…?なら俺もそこ受けようかな」
「わりと偏差値高いから北條は無理だと思う」
「…うっせ」