ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「じゃあ改めて。お名前からどうぞ」
「はいっ、青石 李衣です!よろしくお願いします…!!」
声量と返事はいい。
あとは真後ろに大好きな存在が居るからといって、いちいち照れなければ合格。
……って、俺は何を言われたとおり真面目に審査してんだか。
「ではさっそく、保育科を志望しようと思った理由を教えてもらえますか」
「はい…!わ、私はもともと子供が好きで、小さな頃から保育士という職業に憧れを持っていて、それでっ、」
「はい、ありがとうございました」
「えっ、もう終わり…?」
さらっと強制終了させた浅倉は、戸惑う青石を置いて審査員である俺を見てきた。
その目は少し困ったような、ある意味予想どおりの回答に参っているようで。
「どうだった、北條」
「…あるあるすぎてつまんねえよな。無難な理由だし受かるとは思うけど、とくに期待はされない感じ」
「だよね。俺も思った」
「えっ!?本番もこれでいこうと思ってたのに…!」
それも予想どおりの反応に、俺と浅倉の吹き出した音は混ざった。
言ってもいいなら、シンプルに青石らしさは皆無。
そんな教科書に載ってるような文字を読んでどうするんだと、浅倉も思ったことだ。