ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「じゃあ次は俺が李衣をするから、交代ね」
「あっ、うん!ではっ、お名前からお願いします!」
「浅倉…、李衣です。よろしくお願いします」
ああ、なるほど。
そういう感じか、自然すぎてすげーわ浅倉。
誰よりも先に理解してから、そいつの上手(うわて)さに感心してしまった。
「浅倉 李衣さんですね!では、この学校を受験しようと思った理由を───、……えっ、あさくら……?」
やっと気づいた青石。
面白いくらいに顔が真っ赤。
「っ…!?え、わっ、え…っ!?」
すげーぞ青石。
おまえ、浅倉と結婚したんだってよ。
わりと似合うんじゃね?と、豪快に笑ってやっても良かった。
ただ、理解したあとの2人の切なくも幸せを噛み締める表情を見てしまったら。
「あさくら…りい、…変じゃ…ないよね…?」
「…ぜんぜん。こんな似合う名前、聞いたことないくらい」
「へへ、うれしい」
ああ、お前も分かっちまったんだな青石。
そりゃそうだよな。
わかんねえけど重いんだ、ずっと空気が。
嬉しいのに素直に喜べなくて、ぜんぶぜんぶが切ないんだよ。