ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




彼女の目にはもう、涙は溜まっていなかった。

あんなにも泣いていた青石に触ることすらできなかった俺は、ここでも敗北を思い知る。



「また明日も来るね千隼くん!」


「は?もしかしてお前、毎日来てんのかよ」


「もっちろん!夏休みの予定はまったく無いし、面接対策も千隼くんと一緒にするの」



気づけば夕方になりかけた空。


あれから3人で外庭へ行ったり、院内のカフェで高校生らしく駄弁って他愛ない話で盛り上がったり。

そんなことをしていれば、時間なんかあっという間。



「あっ、そうだ!夏祭りの日はここで一緒に花火見るんだよ?」


「うん。楽しみにしてる」



さすがの俺でもそれは邪魔できねーわ。

夏祭り、花火…。


そうなると俺は今年も一昨年から同様、花火の音を聞きながらバスケットボールと遊ぶ夜が更新されそうだ。



「李衣、その日…」



傍に寄らせた青石の耳元、浅倉は甘い顔をして何かを伝えていた。

とりあえず俺は聞こえないふりに没頭。


泊まっていける───?と、確かに言っていたこと。


だとしても、青石の必死なくらいコクコクうなずく反応だけでバレバレだっつーの。



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