ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




「ふっ、初めてじゃないのに?」


「そっ、そそそれはっ…!」



は……?待て。

そんなの知らねーし、知りたくもねえんだけど。


わざとだろ浅倉。

それぜってえ俺に聞かせるためにわざわざ言ったよな。

まあでも、今日みたいに誰も知らない青石をたくさん知ってんだろうこいつは。



「またあとで電話するよ李衣。…北條も、また」


「…おー、またな」



俺はスッと、誰にもバレないようにスマートフォンをポケットから取り出す。

それを窓際に置いて、青石と一緒に病室を出た。



「あ、わりぃ青石。忘れ物したわ俺」


「えっ、なにを?」


「スマホ。浅倉んとこかも。じゃあなー」


「あっ、ちょっと北條くん…!」



ちょうど青石が改札をくぐったところで白々しくも思い出したふり。


すぐに小走りで大学病院へと戻れば、俺がまた来ることを知っていたのか、再び迎え入れてくれた友達は呆れた視線を送ってきた。



「わざとらしすぎ」


「やっぱバレてたか」


「あれに気づかないのなんて、李衣くらいだから」


「さすが青石じゃねーの」



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