ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




青石には悪いけど、本当は今日、こうして浅倉とふたりきりで話したかったのが本来の目的だった。

今度こそスマートフォンをポケットにしまいこんだ俺は、ベッド脇の椅子に腰かける。



「手紙、」


「え…?」


「なに書けばいいか、まったく思いつかなくて」



沈黙を破ったのは浅倉で、ふっと微笑んでいた。

手がスムーズに動かせるうちに書かないとなのに───と、静かにこぼす。



「おかしいんだ俺。今までは言葉より文字にするほうが得意だったんだけど。
李衣と出会ってから言葉にしすぎて…逆に文字にするほうに戸惑ってる」



幸せな悩みだろ?と、少しだけ自慢されたような気持ちになった。


なにを書くんだろう。

浅倉はそこに、どんな想いを綴(つづ)って青石に届けるのだろうか。



「なら、無理に書かなくてもいいんじゃねーの。さいあく俺が代筆してやることもできるし」


「…いや、せめてひとつでも目に見えるものを残しておいてやりたいんだ」



やめろよ、その言い方。

“確実に俺たちより早くに居なくなる”って言ってるように聞こえんだよ。

わかんねえだろ、まだ。



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