ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
───バコンッ!!
「ぅわあっ…!うぶ…っ!!」
平和な体育の授業にて、痛々しい音と一緒に地面に倒れた女子生徒がひとり。
まっすぐ先には青空。
しばらくすると何人もの影が私を覗き込んできた。
「李衣っ、ぼーっとしてたのはあんただしっ、浮かれてたのもあんただけどっ!あんたにパスした私も悪かった…!」
でも楓花、それほとんど私が悪いって言ってるようなものじゃない…?
“もう当たれ”って言ってたの、ちゃんと聞こえてたよ…?
「しっかりしてよ李衣っ!フォワード欠けたら大変なんだからっ!!てかタオル濡らしてくるからちょっと待ってて…!」
でもなんだろう…この幸せな痛みは。
これが浅倉くんを追いかけた先の痛みならば、私はどんなものだとしても耐えられるような気がした。
「おーい青石~、ボールじゃなくて浅倉を追いかけんのも程々になー?」
「はははっ!うまいこと言うなよ拓海!」
自分で認めちゃうけど、私は完全に浮かれている。
クラゲのようにふわふわ浮いてる毎日を過ごしていることは間違いない。
女子に加えて男子までもが、みんなして囲んでくる。