ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「北條、去年の体育祭のこと…覚えてる?」
「…覚えてる」
「借り人競争のとき、お前はくじ引きで何を引いた?」
「………“クラスでいちばんのバカ”、だったっけ」
あれはお前に対する優しさじゃねえからな、浅倉。
お前の病気に薄々気づいていたから、あんなことをしたってわけでもない。
ただ、やっぱり俺じゃ駄目なんだって、あのときも分かってたんだよ。
「嘘でしょ」
「………」
「“クラスでいちばんのバカ”なんて。そもそも、そんなくじすら無かったはず」
それは体育委員でもない浅倉が言えたことじゃない。
あのくじを作ったのは俺だ。
だから何が書いてあるのか、ぜんぶ把握してるのも俺なんだよ。
「───“未来の嫁”」
つい動揺を隠すことができなかった。
まさか俺があのとき引いたくじの内容をズバリと当ててくるとは。
「お前が引いたのはそれだろ、北條」
そうだ、大正解だ。
俺もなんでそんなことを書いてしまったのか、自分で自分に不思議でならなかった。
しかもよりによって引いてしまうなんて想定外だったし、それが浅倉にバレていたとも。
「ゴホッ、けほっ、」
「おい浅倉…?大丈夫か…?」
「…へいき、」