ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
青石が居たときは出なかったものだ。
あえてそうしていた我慢が、ここで途切れたような咳だった。
ぜえぜえと、その呼吸だけで心配になってくる。
「…俺さ、北條。最近すごい幸せな夢を見るんだよ」
「幸せな夢…?」
「何回も何回も見る夢がある。それが結構リアルだから、初めて見たときはびっくりしたくらい」
すると浅倉は、俺にお願いをした。
枕の下を見てくれ───と。
半身を起こしたクラスメイトに近づいて、俺は言われたとおり枕の下に手を突っ込んでみる。
そこには1枚の薄い何かが入っていた。
「これって、プリクラ…?」
「そう。…李衣と初めて撮ったやつ」
高校1年のときか。
まだ歩けている浅倉と、今より髪が短い青石。
誰がどう見ても、どこにでも存在する高校生カップルが初々しくも楽しそうに写っていた。
「ほら、枕の下に入れておくと夢に出てくるとか言うだろ。俺ちょっとそれ信じて、ずっと入れてた」
「そしたらマジで出てきたってことか」
「うん。それがさ…、“いまの夢”じゃないんだよ」
いまの夢じゃない…?
浅倉の手にプリクラを返して、俺は続きを待った。