ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「馬鹿かよ…、なんでもう諦めてんだよ。まだ分かんねえだろ、その病気は人それぞれなんじゃねーの…、」
「…それが俺、ここで未来の李衣に会えたんだ」
「は……?」
「一緒にバウムクーヘン食べた」
バウムクーヘンって…。
夢にしてはリアルすぎる気もするし、思い出し笑いをする浅倉は夢を見ていた反応でもないわけで。
だから俺は、もっともっと意味が分からなくなった。
「んで、どうだったんだ。そのバウムクーヘンの青石とやらは」
「…美人さんだったよ。性格はちょっと違うけど、でも…すごく似てた」
「なら、せめて今の子供っぽい部分も大人になってりゃいいのにな」
「…そこが可愛いんでしょ」
俺もとくに否定はしなかった。
ぜったい嘘はつかないし、何事にも一生懸命で、笑ったり泣いたり、見ているだけで元気になれる。
すると「あ、…気がかり、もう1個あった」と、浅倉は眉を寄せて視線を落とした。
「さっき…、泣かせちゃったこと」
「……当たり前だろ…、あんなの」
あんなのどう考えてもプロポーズなんだよ。
青石にとって何よりも嬉しい、でもそれ以上に切ないプロポーズ。