ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「あいつはたぶん…、ばあさんになっても浅倉一筋な感じするわ」
「…わかってる。李衣にとってのいちばんはこの先も俺だけだから、北條にもそこは悪いけど」
駄目なことじゃないと、俺は思う。
もし浅倉が病気だろうが無かろうが、青石や俺より先に旅立ったとして。
そうなるときっとあいつは別のパートナーを探すこともなく、保育士として子供に囲まれた楽しい人生を歩むんだろう。
しょっちゅう浅倉のことを思い出して、空に「千隼くん」ってつぶやいたりしてんの。
俺はそんな未来の青石が想像できすぎて仕方ねーわ、浅倉。
「北條は俺と似てるから、いちばんじゃないと気が済まないところがあるでしょ」
「借り人競争でよくわかった」と、皮肉を込めて笑ってきた。
そうだ、“いちばん”でなければ意味がない。
だから俺は最後まで借り人を見つけることができず、失格となったのだ。
「なあ…浅倉」
「…なに?」
「……いや、やっぱなんでもねーわ」
そんなの聞いてどうすんだ俺。
自分の首を自分で絞めるようなものだ。
やめろやめろ。
付き合ってれば自然の流れじゃねえかよ。
「病院には何度か泊まりに来てるよ。…でも去年の夏休み。近場ではあるけど、ふたりで旅行にいった」