ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
俺がずっと気になっていたことを察したらしいそいつは、俺に対して鼻を伸ばすこともせず、穏やかに伝えてきた。
だから俺だってすんなりと受け止めてしまったことが悔しい。
「後悔したくなかったし、そこしかないと思ったから」
「……あいつ隠すの上手すぎだろ」
浅倉はポーカーフェイス極めてそうだから想像どおりだとしても、青石だぞ。
そんな大人の階段を上ったならば顔に出るはずなのに、まったくいつもの青石すぎて分からなかった。
「北條。お前は俺には勝てないよ」
「………」
わかってるよ。
わかってんだよ、そんなこと。
勝てるなんて思ってねーよ最初から。
勝とうとも思ってねえし、今日にもすべての角度から突きつけられた。
「だけど、もしそれでも、いつか2番でもいいって……俺の次でもいいって、思ったとき、」
このとき俺はたぶん、呆気に取られたような、言葉にならない反応をしたと思う。
「そのときはラッキーセブンの日に…ローダンセ。……ローダンセの花を俺と李衣の前に持ってきてよ」
「…なに…、言ってんだよ……、おまえ、」
ローダンセ…?
俺は花なんかに興味はないし、そんな名前の花があることすら初めて知った。