ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「あ、でも、そのときまで花言葉はぜったい調べるなよ北條」
どんな気持ちで俺に言っているのか。
それはいつかの俺に何かを譲るつもりで言っているのか。
この瞬間のすべてを見据えたような18歳の親友の言葉は、当時の俺には到底理解できるものじゃなかった。
「…ちげーだろ、浅倉……、そうじゃねえよ、青石にはお前しかいないって……俺は言ってんだよ、」
見ろよ、そのプリクラ。
俺じゃそんな顔にしてやることはできねーんだよ。
青石のいちばんは、どう転んだってお前なんだよ浅倉。
「そんなの知ってる。…だけど、」
聞け、過去の俺。
バスケばっかりやって、格好つけては良い顔ばっかして、余裕なふりをしつつも結局は後悔している18歳のガキ。
おまえは浅倉には勝てない。
どうしたって、なにをしたって勝てない。
だからそこはもう、諦めて受け入れろ。
浅倉は、このときすでに俺の未来を認めてくれていたんだ。
「もし俺以外に託せるとしたら───…北條しかいないんだ」
そして初めて。
震える足で病室を出ようとした俺へと、誰よりも強く優しい親友は「ありがとう」と、贈ってきた───。