ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




「明日はちょうど土曜日だから、朝になったらすぐ会いに来るね」


「青石さん、そのことなんだけどね…」



そんな私へと、どこか言いづらそうに声をかけてきたのはお母さんだった。



「来週の月曜日に会いに来てもらってもいいかな…?千隼、ちょっと手術があって」


「…手術…?」


「…ええ。…青石さん、」



説明できない何かがあるのだろう。

言葉に詰まりながらも私に伝えようとしているお母さんは、とうとう頭を下げてきた。



「えっ、ど、どうしたんですか…?」


「どんな千隼を見ても…変わらず接してあげてほしいの。…お願いします」



当たり前だよ。
そんなのは当たり前なんです。

今さらすぎるお願いだから、私は逆に困惑してしまった。



「青石さんが隣にいてくれるだけで…、きっと、きっと千隼は、どんなことも乗り越えられると思うから…」



続けてお父さんまで同じように頭を下げてくる。

もちろんうなずいたけれど、それ以外に気にかけた言葉を送ってあげられなかったことが悔しい。


これ以上、神様は彼にどんな試練を与えるつもりなのか。



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