ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
もし、“神は乗り越えられる試練しか与えない”と言うのなら、私はその神様に指をさしてまで言いたい。
人間はあなたが期待しているよりも、ずっとずっと弱くて脆いですよ───と。
あなたは過信しすぎている。
現実はそこまで甘くはないんだ、と。
「浅倉くんは急性呼吸器感染症にかかっている」
「きゅうせい…、呼吸器…感染症……?」
「彼は元々、呼吸器が普通の人よりも弱い。だからこそ細心の注意を払っていた」
どうしてか帰る気にはなれなくて。
ずっとロビーの端の椅子に座って、過ぎゆく時間だけを見つめていた。
そしてとっくに空が暗くなってから、叔父は静かに伝えてきた。
「今の段階でも肺炎の症状が出ている。それもかなり…重症だ」
「…このままだと……どうなるの、」
「最終的な結果として、呼吸すること自体が難しくなって、……いつ心配停止になるか分からない状態となる」
単純だね、すごく単純。
漢字のまま、心臓が動かなくなってしまうんだと。
こんなにも簡単な話なのに、ここまで重いなんて知らなかった。
「すでに現時点でも呼吸困難、なにより全身にSMAの進行が回ってしまっているから……はっきり言うと、非常に危ない状況だ」