ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「だから浅倉くんはっ、そのっ、顔とかだけじゃなくて…もうぜんぶ!
ぜんぶ格好よくてっ、今日もおんぶしてもらえて王子様みたいで…!」
「…もー、い、」
「へ…?」
「…もう、いーから、わかったから」
あ……、照れてる。
夕陽もない時間だし、季節は秋。
その赤色は身体から出ている色。
「…でも王子様ならお姫様抱っことかじゃない?」
「え?」
「俺、おんぶだよ。…やっぱすごい情けなくて…ダサいな俺」
暗くなってしまった声。
浅倉くんは自分の殻に閉じ籠るように自分自身を呪い始めてしまった。
「あんなみんなの前で格好つけたわりには結局ぜんぜんダメだし…」
「あさくらくん、」
「北條のほうが良かったかもしれない。あいつ力ありそうだし、俺より背もでかいし、」
「浅倉くん、」
「いずれ俺なんか自分の身体すら───」
「浅倉くん!!」
強めなものが保健室に響くと、はっと平常心を持ち直して見つめてくる。
私が怒っていることを察したのか、少しだけ唇を噛みながら彼はうつむいた。
どうしてそんなに自分のことを悪く言うの…?
ダサくないし、情けなくもないのに。
聞いてる私が悲しくなってくる。