ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「うん?なーに?」
「いや、俺のほうがちょっと遅かったから」
「私のほうは緊急ってわけでもないから…!言って言って!」
珍しく様子を伺いながら口を開いていたし、どこか緊張しているようにも受け取れたから。
大切なことを私に伝えようとしていたのかもしれない。
「…俺は緊急かもだけど、」
「なら浅倉くんからどーぞ!」
「……このあと、俺と一緒に模擬店まわりに行かないかなって」
ぶわっと、目の前いっぱいに幸せが飛び散った。
模擬店を一緒に回るお誘いだなんて、その言葉だけでこの上なく嬉しいのに。
何よりそれ以上のものがあったから。
「私もまったく同じこと誘おうとしてたの…!」
「………青石さんにとっては緊急じゃなかったんだ」
「えっ、」
「まあ、そうだよね。俺なんかと回っても楽しくないだろうし」
浅倉くんのネガティブスイッチ、オン。
「俺なんか」という言葉が繰り返しぶつぶつ聞こえてくる。