ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「……浅倉、くん、」
ただただ、きれいだった。
一筋、つうと、彼の長い睫毛を濡らして、透き通るような肌を伝っている涙は。
こんなの言ったら最低かもしれないけれど、許されるならずっと見ていたいと思ってしまうほどに。
思わず手にしていたチョークを置いて、浅倉くんが座る席へとゆっくり近づく。
「ど、どうして泣いてるの……?あっ、さっき転んだところ…っ、やっぱり怪我しちゃった…?」
彼は何も言わなかった。
なにも言わないまま、私をただまっすぐ見つめて、もう一筋の涙を流す。
「浅倉くん、来月はイルミネーションいこうね。絶対だよ?約束だよ」
苦しいね、つらいよね。
いっぱい、いっぱい、頑張ってるんだよね。
どうしてかそんなふうに言ってあげたくなった。
まだ彼のことを何も知らないけれど、言ってあげたくなった。
「これからもいろんなところに一緒に行くんだよ?」
「……うよ、」
「え…?」
「…嫌うよ、俺のこと」
小さな声は、震える唇は、冷たくて寂しい言葉を伝えてきた。
「青石さんは……いつか俺を必ず嫌う」
どうしてそんなことを言うの。
どんな浅倉くんを見ても嫌わないって、前に言ったばかりなのに…。