ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「なんだろう…、悲しい目をしてる」
「…悲しい…目、」
「たとえ相手がどんな人間だったとしても。愛ってのは、相手に対する本気度で変わるものよ李衣」
5歳年上の姉の言葉は、まだ私には理解しにくい部分なのかもしれない。
今は幸せで、幸せすぎて、夢みたいな毎日のなかで。
お互いの心に抱えたものを何ひとつとして知らない今だから。
でも、あの日の文化祭で彼が見せた涙と言葉だけは、ふかくふかく私の心に染みつづけていた。
「ってことで、これに着替えたらあたしの部屋に来な。メイクもしてあげるから」
「えっ!本当に!?ありがとうお姉ちゃん…!!」
「言っとくけど、こんなイケメン彼氏を持った妹の姉としてあたしが恥ずかしいだけ」
「すぐ着替えてくるねっ!!待ってて!」
いいですか皆さん。
持つべきものは姉です、お姉ちゃんです。
「あんたはイエローベースだからオレンジ系かな。───うん、完璧。じゃあ次はアイライン引くから下見て」
「こ、こう…?」
「首じゃなくて目線だけ。…はいストップ、そのまま動かないでじっとしてなさいよ」
「は、はい…」