ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




「座右の銘…?知らない…」


「なら特別に教えてあげる。───“愛すること、それすなわち理解すること”」



屁理屈(へりくつ)なお姉ちゃんにしては、またずいぶんと哲学的。

“愛”という言葉をこんなにも言う人だったのかと、いちばん驚いたのはそこだった。



「単純な話、理解がなければ愛は生まれないってことよ」


「…どこが単純な話なの…?」



聞けば聞くほど混乱してくる。


だってそれって絶対的なものがない。
確信的でなければ、形すらない。

理解とか愛とか、そもそもそれは何?ってところから始まるものばかりだ。



「へえ~、じゃああんたって顔も名前も性格も知らない人を愛するなんて難しいことができるんだあ」


「…それは極端すぎるよ」


「本当のことじゃない。相手がどういう世界を見てるのか、
それをもっと知りたいって理解しようと思ったときに気づけば生まれて、気づかないうちに大きくなってるものが愛でしょ」



彼がどんな世界を見てるんだろうって、私はずっとずっと気になっていた。

きっときれいな世界なんだろうなって勝手に想像したりして。



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