ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
もしかすると知り合いに出会うかもしれないと思いながら、浅倉くんとほんのわずかな距離を空けて足を進める。
「お、お祭りみたいだねっ」
「……うん」
「な、なにか温かいものとか飲みたいね!」
「……うん」
会話が思うように続かない…。
私も緊張しているけど、浅倉くんはいつも以上に反応がワンテンポ遅れてる。
どうしたんだろう浅倉くん。
確かに自分から広げるほうじゃないとしても、いつもはもっと意欲的に話してくれるのに。
今日は違うみたい…。
「ねえ今日のメイクいつもと変えてみたの。どう?似合う?」
「だよな。いつも以上にかわいいなーって思ってた」
「え~ホント?うれし~」
すれ違ったカップルさんの会話。
たまたま聞こえてきただけの会話は、私にとてつもない不安を与えてきた。
……もしかして私、似合ってない……?
似合ってないくせに張り切っちゃって、だから浅倉くんは反応に困ってて、元気がなくて。
こんな女と隣を歩くなんて嫌だとか思ってたりする…?