ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




「……青石さん、そんなに離れてたら迷子になるよ」


「だっ、大丈夫…!浅倉くんについていくからっ」


「暗くなってきてるし、危ないから」


「視力いいから平気なの!」



そうだよねそうだよね…!!

普段は化粧っ気すらないような女が急にバカみたいに気合い入れてきて、困惑しないはずがないよ…。


似合ってないなんて直球には言えないだろうし、もしかするとずっと笑いをこらえているのかもしれない。



「俺と歩くの、そんなに恥ずかしいとか」


「ちっ、ちがうよ…!!」



どうしてそうなっちゃうの。
ちがう、本当にそうじゃないのに…。

思い出してしまう、文化祭の日の浅倉くんの涙と言葉を。



「青石さん、」


「っ…!」



地面を見つめて立ち止まっていた私の手が、無理やりにも引かれる。



「…暗い場所は怖いって言ったでしょ俺」


「あ……、」


「視力がいいなら尚更。…俺の傍にいて」



そうだ、なにやってるの私。

せっかく時間を作ってまでもデートしてくれてるのに。



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