ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「彼氏なら家まで送ってあげるべきなんだろうけど…、ごめん」
「う、ううん…、お母さんにお迎え頼むから大丈夫だよ。…今日は本当にありがとう。楽しかった」
イルミネーションに誘ってくれて、忙しいのに時間を作って合わせてくれて。
だから思わないよ、せめてもう少し一緒に居たかったな…なんて。
そんなこと、思わない。
「わっ、浅倉くん…?」
浅倉くんはお家の人には私とのことは言ってないのかな…。
私はお母さんにもお姉ちゃんにも即バレて、お父さんには報告しづらいからしていないけど、たぶん雰囲気で感じ取っているはず。
ぐるぐる考えながら歩く、駅までの帰り道。
すると浅倉くんは道を抜けるように、ルートを変えた。
「浅倉くん…!こっちは街灯も少ないからあぶな───、っ、……、」
冬の匂いに混じった、石鹸の香り。
冷えてしまった気持ちと身体を包み込んでくる、温かいぬくもり。
「…楽しかった、すごく」
聞いたことないくらいの優しい声が通り抜けた。
こんなにもぎこちない動きがあるんだって、それくらいの力加減で。