ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
壊れそうな女性
「ちょっとそこの暇人、やることないなら手伝って」
「暇じゃない忙しい」
「お母さんの目には課題を後回しにして1日中ぼけーっと冬休みを無駄に過ごしてる高校生にしか見えないけど?」
無駄に過ごしてなんかない。
むしろ今年は素晴らしすぎる冬休みだと自信を持って言える。
それに本当に私は忙しいんだよ、お母さん。
今もずっとあの日のイルミネーションデートのことでいっぱいで、思い出すだけで叫びたくなるくらい忙しい脳内。
「またコインランドリー?」
「シーツがぜんぜん乾かないのよ。重いものは若いのに運んでもらわなきゃ」
「私だってスーパーマンじゃないのに!お姉ちゃんもいるんだからお姉ちゃんに頼めばいいし、そもそも一気に洗うお母さんもお母さ───」
「ごちゃごちゃ言ってないで来る!!お小遣いナシにしてスマホも没収されたいの?」
「行きます行きます…っ!」
間違いなくお母さんにしかできない脅し。
お小遣いナシは高校生にとって痛いところだし、何よりスマホが没収されたら浅倉くんとメールできなくなってしまう。
電話もできなくなってしまう。