ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「だって針が皮膚を刺してくるんだよ?そんなの生き物にしちゃダメなことじゃんっ」
「なら予防接種が飲み薬になったらいいっていうの?」
「もちろんっ!それなら毎日でも飲むよ私!!」
「…さっきの言葉、前言撤回するわ」
去年は何かと理由をつけて免(まぬが)れた私なのだけれど、今年は母も譲る気はないみたいで。
「やっぱりまだまだ子供じゃない」とつぶやいたお母さんは、こんなことを言ってきた。
「叔父さんに頼んだからいいでしょ」
「え、叔父さんって、あの叔父さん?うちの家系で唯一医者になったエリートな叔父さんのこと…?」
「そ。親族にやってもらうなら安心でしょ?お願いしたら快くOKしてくれたわ。ちなみに明日だからよろしくね」
「そーいう問題じゃないのに…!てか明日!?そんな急なことある!?」
「仕方ないじゃない。年末はどこもバタバタするのよ」
わざわざ任意の予防接種を受けに大学病院まで行けと。
それくらい自分の子供がウイルスにかからないよう心配してくれてるんだろうけど…。
お姉ちゃんの強引さはお母さんの血だったのかと思うと、恨みたくもなる。