ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「あ、ちょっと電話だわ。そろそろ乾くと思うから先に畳みに行って李衣」
「えー、どうせ長電話になるくせに!」
「なるべくシワ作らないように畳むのよ?いい?わかった?」
「わかったってばっ」
バンッと、助手席のドアを強めに閉めた。
気にせずお母さんはスマートフォンを耳に当てて、ケロッと表情まで変えてからの甲高い声。
「っ……、ぅ…、」
「……」
「ぐす…っ、ズッ、……うぅ、」
「……」
ガゴンガゴン。
複数のドラムから聞こえてくる音に邪魔されつつも、衣服を畳むゾーンにいる私にはしっかり聞こえてくる。
時折として漏れる、むせび泣くようにすすり泣く声。
それは間隔を空けて同じように洗濯物を畳んでいる女性からのものだった。
「こんなのじゃ駄目ね、…しっかりしなくちゃ私、」
あの、なにかあったんですか…?
大丈夫ですか…?
さすがにそんなこと言えるわけもなく。
見ることすらしてはいけない気がして、私はただ気づかないふりをしながらシーツを畳む。
「……同じ高校、なんだ」
それから私よりも先にそそくさと畳んでコインランドリーを出ていった女性。