ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
彼女が泣きながら畳んでいた衣服のなかには、私の高校と思われるものと同じ指定のジャージがあった。
毎日のように見ているわけだし、そこは間違えない。
顔はよく見ることができなかったから、たとえクラスメイトである誰かのお母さんだったとしても分かりそうにないけれど。
「壊れちゃいそうなひと…、」
初対面の私でも心配になってしまうくらい、疲れが見える風貌をしていた。
あまり質の良い睡眠は取れてないんだろうなって。
こういうところでしか泣けない、誰も見ていないところでしか───。
こんなのじゃ駄目だと自分自身に言い聞かせていた彼女からは、寂しい気持ちが伝わってきた。
「痛い痛いイタイっ!いたいっっ!!」
「…まだ何もしてないけどな」
「えっ!?うそっ!」
「動くなよ、失敗するぞ」
「そんなの冗談でも言っちゃダメだよ叔父さん…っ!!」
結局は行くしかなかった地獄の翌日。
どんなときも冷静で物静かな叔父は、お父さんとは正反対の性格で。
とうとう暴れる私に見かねて、近くで見守っていた看護師に「こいつを押さえててもらえますか」と、静かに合図を送った。