ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
「チクっと!?痛さどれくらい?つねられるくらい?長さは?一瞬…!?ねえ一瞬で終わる…!?」
「昔もやってやったろ。あれくらいだ」
「覚えてるわけないじゃんっっ」
まだ叔父さんがこんなにも大きな大学病院ではなく、市立病院にいたとき。
よくお姉ちゃんと一緒にこうして注射をしてもらっていたらしいのだけど。
相変わらずそのときもギャン泣きしてたなあ…ってくらいの思い出しか甦ってこない。
「お願いだから刺すとき言ってよ…!?いきなりはやめてね…!?」
「わかった」
「ちょっと待ってぇぇぇっ!!」
「…まだ消毒してるだけなんだが」
ヒヤッと冷たい感覚は、どうにも注射針を刺す前に塗られる消毒液。
それだけで心臓はこの上なく暴れ回るのだから、自然と身体が逃げ腰になってしまうのも無理はない。
「ふふ、先生の姪っ子さんなんですね」
「そのよしみってだけでここまで来られるんだから、まったく困ったものだよ」
「えっ!?快くOKしてくれたってお母さんは言ってたのに…!」
「…あんなのそう言うしかないだろ」