ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
なんとか無事に終わった予防接種。
全体力を消耗して憔悴しきった私の左腕に保護用パッドを貼り付けていた叔父へ、奥から別の白衣の男が顔を覗かせた。
「叔父さんちょうど休憩…?私もすごくお腹空いててっ、だから───」
「身内から集(たか)ろうとすんな」
「………」
なぜバレたし。
「チビのときからお前は芽衣と比べて分かりやすい」と、呆れた視線を送ってきた。
「いいでしょ注射がんばったんだから…!」
「おまえ何歳だ。小学生の頃と同じこと言うのやめとけ」
「そんなんだから独身なんだよっ」
「…おい李衣、」
うっ、やばい…。
もしかして怒らせちゃった…?
お父さんと違って基本クールで無口な人だから、なに考えてるかまったく読めないんだよね…。
「お前からは兄貴の血しか感じない」
怒っているわけではなさそうで、これは姪っ子の私だからわかる。
叔父さんの機嫌が良さそうな反応だってこと。
「あははっ、だってお父さんの娘だもん!」
「安いのにしろよ。ここの食堂は高い」
「ありがと叔父さんっ!それにねっ、叔父さんに良い話があるんだっ」
「いい話?」