ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。
ここからはバトンタッチ。
新たに現れた先生に診察室は任せて、私たちは院内にある広々とした食堂へ向かった。
「私っ、実は彼氏ができた!!」
「……詐欺には気をつけろよ」
「だから本当なんだってば…!まったくどいつもこいつも!!」
安いのにしろよ、なんて言っていたけれど、私が本当に安いものを選ぼうとすれば「こっちにしとけ」と、高くてボリュームたっぷりなメニューを勧めてくる。
それが私の叔父だった。
「同じクラスの男の子なんだけどね!これまたすっごい格好よくてっ」
「そりゃよかったな」
「うんっ!浅倉くんって言うんだけどね!」
変わらずいつもの調子で説明する私の言葉に、なぜかピタッと目の前の箸の動きは止まるどころか置いてしまった。
「あれ?叔父さん食べないの…?大好物の生姜焼きなのに」
偏食なところがある叔父は、気に入ったものしか食べないところがあって。
だからいつも親族が集まるときは必ず彼の好物である生姜焼きが用意される。
うん、やっぱりこの人は結婚に向いてないと姪ながらに思った。
「……名前は?」
「えっ」
「その彼氏の下の名前」