ここは君が夢みた、ふたりだけの世界。




珍しい。
まさか姪っ子の話に質問してくるなんて。

いつも私がペラペラ話すところを聞いているのか聞き流しているか区別できない空気感で見守るような人なのに。



「やっぱいい。…同じ苗字なんか居るだろうしな」



ボソッと聞こえた後半の言葉は、私にはよく聞こえなくて。

というより、私のほうが医者である彼に用があったんだった。



「ね、ねえ叔父さんっ、実はその子のことで聞きたいことがあって…」


「…聞きたいこと?」


「うん、たまにね、躓くっていうか…転んじゃうんだ。なにもない場所で引っかかって転倒しちゃうの。それ…、なにかの病気だったりする…?」



すると一点を見つめていた眼差しが微かに開いて、それから誤魔化すように伏せられた。



「え、やっぱり病気なの…?ネットで調べても調べても“ストレス”だとか“自律神経の乱れ”とかしか出なくて、」


「───やめとけ」


「…え…?」



いつもより低い声と険しい表情。

みんな、みんなそうだ。


浅倉くんも叔父さんも、どうして私が踏み込もうとすると強く止めてくるの。


やめとけって、どういうこと…?
なにをやめなくちゃいけないの…?



「あまり調べるのはやめとけ、李衣」



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