夜明けを何度でもきみと 〜整形外科医の甘やかな番外編〜

 帰宅した棚原を、エプロン姿の菜胡が迎えてくれた。可愛い。もうこれ妻って言ってもいい。どこにも出したくないし、真綿で包んで羽毛布団の中に入れておきたい……。

「おかえりなさい、お疲れさまでした」
 パタパタと菜胡が駆け寄ってきて、俺の荷物を受け取ってくれた。そのまま洗面所へ直行して、うがいと手を洗ってから、ようやく菜胡を抱きしめる。半日ぶりの菜胡だ、疲れが一瞬で吹き飛んだ。

「ただいま」
 妻にただいまのキスをする……最高じゃないだろうか。
 
 菜胡は寮を出て病院近くのマンションに引っ越した。本当は同棲したかった。だが俺の当直や菜胡の勤務シフトを鑑みると、病院から離れている俺のマンションでは菜胡が不便である事がわかった。ならば、と、広めのマンションを探し当て、週の前半はこうして菜胡のマンションで過ごして、金曜の夕方、菜胡を自分のマンションへ連れ帰る暮らしをしている。
 
 ただいま、と言って迎えてくれる菜胡も、二人で食卓を囲む食事も、そして一緒にお風呂へ入るのも、だいぶ慣れてきたし、楽しめている。

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