夜明けを何度でもきみと 〜整形外科医の甘やかな番外編〜
 女性が廊下を奥まで行って左に曲がるのを見届けた棚原は、今度こそ医局に向かおうと振り向いた。だが目の前には先輩がいた壁に寄りかかる姿勢でニヤニヤしていた。

「なに、女の子の背中見つめちゃって」
「あ、先輩……」
 変なところを見られてしまったな、と思いつつ、後頭部をかきながら答える。

「別棟で今日開かれる研修に来た子ですよ、迷子になってしまったそうで」
「ふうん。お前が女の子に親切にするなんて珍しいじゃん、ああいうのが好み?」
 歩き始めた棚原に、先輩も着いてくる。

「好みとかそういうのじゃないですよ、困っていたら普通に助けるでしょうが」
 はは、と笑いをこぼした。本当にそうで、好みだったから道を教えたわけじゃない。困っていたようだから、知っている限りの道を教えたまでだ。

「まあ、そうだがな。――昨夜はありがとう、助かった。なかなか忙しかったみたいだな?」
「そこそこ来ましたね。退屈で熟睡してしまうよりはいいかと。また人手が要るときは呼んでください、駆けつけますから」
「ああ、そうさせてもらうな。お疲れ」
 話し終える頃はちょうど医局に到着した時で、ロッカーから荷物を引き上げ、帰路に着いた。
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