夜明けを何度でもきみと 〜整形外科医の甘やかな番外編〜

『独占欲 〜俺の宝物〜』

 整形外科外来の診療が終わった。慌ただしかった空間は落ち着いて、さあ休憩しようかという時、樫井先生は人と会う約束があるとかで早々に外来から出て行かれた。
 樫井先生は昼になると外へ出ていく日が多い。懇意にしている業者との打ち合わせらしいが、そのついでにうな重だ中華だとわがままを言って昼をご馳走になっているのだと、大原さんが笑いながら話してくれた。おっとりしていて、なかなか強かな先生だ。

 残された俺は、大原さんと菜胡の三人でコーヒーを飲んでから病棟へ上がり、昼はそれから食えばいいか……そう思っていた時、外来の電話が鳴った。

「はい、整形外科外来です」
 一番近くに座っていた大原さんが電話に出た。

 休憩中のこういった電話は、時に救急車の受け入れが可能かどうかの電話だったりする。カップを置いて、少し緊張して大原さんの会話を聞いた。

「あら、どうしたの、うん……あらそうなの! いいわよ、何時から? 十四時ね、わかったわ」
 どうやら救急では無いらしい。ややホッとして、冷めかけたカップを手に取った。そして次の大原さんのセリフに咽せそうになった。

「菜胡、十四時から外科入ってくれる? こずえちゃんが早退したんだって」
 え?
 今日は菜胡、整形外来に居ないの?
 聞いてないんだけど!

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