夜明けを何度でもきみと 〜整形外科医の甘やかな番外編〜
整形外科外来の午後は診察がない。急患が来れば外来で診察をして必要に応じて入院や処置を施すこともあるが、まあほとんど来ない。
だから他科、特に外科や内科外来とは違って、午後はわりとゆったりとした時間がここには流れている。これまでは大原さんが他の外来に呼ばれてヘルプに入り、菜胡は整形外来で留守番をしていた。その日の後始末やら翌日の準備をしてくれていて、だから俺も菜胡に会いに外来へ来ては束の間の逢瀬を楽しんでいた。
なのに、今日はそれができないだと?
「あれ? いつもは大原さんなのに今日は菜胡ちゃんなの?」
なぜなのか全く想像がつかない。大原さんが居ない時はここで菜胡と気ままに過ごしていたのに、これからそれができなくなるという事なのか。それほど深刻になるような事では無いと思いながらも、外来で菜胡と過ごす時間も大事な時間だから、諦められない。
「あ……いろんな外来を経験したくて、その、勉強のために」
少し照れ臭そうにうつむく菜胡が可愛すぎる。
いやそれより勉強だと?! 何を学ぶんだ、俺以外の野郎の診察補助なんか学ばなくていいのに。