僕は君に毎日恋をする
番犬?
「━━━━━ね、ねぇ…俺はなんでこんな睨まれてんの?」
課長が、苦笑いをして羽衣に言う。

「あ、あぁ…
ちょっと待っててください」

羽衣は、タタタと乃蒼のデスクに向かった。
「西蓮寺さん」(仕事中は、苗字呼び)
「ん?なぁに?」

「笑って?」
「ん!」
ニコッと微笑む、乃蒼。

「うん。お願いだから、課長を睨まないで」
「睨んでないよ。
羽衣は可愛いから、課長が手を出さないか監視してるんだよ?」
「大丈夫だよ。
課長は愛妻家で会社内でも有名だし、娘さんを溺愛してるし、私とは仕事してるだけだよ」

「わかってるよ。でも、不安なんだ」


乃蒼と羽衣が、交際し始めたことはあっという間に会社内に広がった。

もちろん交際宣言したわけでも、誰かに話したわけでもない。

乃蒼が、あからさまに態度に出るからバレたのだ。

男性社員と話そうもんなら男性社員を睨み付け、ことある毎に羽衣に話しかけ、休憩中は離れない。
羽衣が少しでもデスクを離れると、どこに行くのかずっと目で追うのだ。

これで、わからない方がおかしい。


「すみません、課長」
「いや…とにかく、気にしないようにする…」
「はい。すみません。
えーと、これをコピーして纏めるんですよね?」
「あぁ、頼むよ」

資料を抱えて、課長から離れて漸く乃蒼は落ち着いた。


乃蒼の溺愛は止まらない━━━━━━

“羽衣がいいよって言うまで待つ!
僕はいつでも、大歓迎だからね!”

同棲の話に、考えさせてほしいと言った羽衣。
その羽衣に、こう言った乃蒼。

同棲の話はしないが、朝は早朝からメッセージが来て、早く迎えに来る。

ランチは基本的に一緒だが、仕事で別々になると帰ってきてから“羽衣不足だから”と休憩室に連れていかれキス責め。

帰りもギリギリまで一緒にいて、必ず羽衣のコーポ前で駄々をこねる。

「まだ、離れたくない!」
「でも、明日も会えるよ?」
「わかってるよ。でも、やだもん!」

「乃蒼!」
「あ…怒んないで?
手、離すから!」
シュンと落ち込む、乃蒼。

「乃蒼」
「ん?」
「好きだよ!」

「うん!」
ニコニコ微笑む、乃蒼。

(あ……尻尾が見えた気がする……(笑))

羽衣は、こんな状態の毎日なら同棲してもいいかも?と思い始めていた。
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