僕は君に毎日恋をする
「━━━━━西蓮寺さん!」
「ん?」
乃蒼に手を引かれながら、羽衣が言った。

「あの…手…」

「え?あ、ごめんね!」
「いえ…」

「家、どっちだっけ?」
乃蒼が微笑む。

「◯◯です」
「そうなんだ!
僕もだよ!」

「そうなんですか?」

「◯◯スカイタワーマンション」

「え?あの、高いマンション!?す、凄い……
私は、そこから10分のとこにあるコーポです」
「そうなんだ!
びっくりだなぁー!
こんなに近くにいたなんて、運命みたい!」

「え?運命?」

「え?あ、いや、ご、ごめん!
退くよね…
僕、何言ってんだろ……」

「………」
「………」
沈黙が流れる。


そして、口を開いたのは羽衣だった。

「━━━━━━━西蓮寺さんがいいです、私」
「え?」

「さっきの………三人の中で誰がいい?ってやつ」
「小宮山さん…」

「あ、だからどうってわけじゃないけど……
それに……私も“運命”って信じてます!
…………じゃあ、私はここで!
送ってくれてありがとうございました!」

ペコッと頭を下げて、羽衣はコーポに駆けていった。

駆けていく羽衣を見ながら、乃蒼は胸を押さえた。

ドキドキして、胸が痛む。
苦しくて、痛くて……切ない。

「僕も、小宮山さんがいい。
誰よりも、小宮山さんがいいよ………!」

あぁ、僕は………

小宮山さんが好きなんだ━━━━━━━


その日から、乃蒼は羽衣に積極的に声をかけるようになった。

「小宮山さん、これのコピー頼める?」
「はい」

「小宮山さん!ランチ一緒にどう?」
「え?あ、はい」

「小宮山さん!一緒に帰ろ?」


「━━━━━━乃蒼」
「ん?」
会社の喫煙所で、高敏と千暁の三人で休憩中の乃蒼。

「天使ちゃんのこと、本気なんだな?」
「うん」
「フフ…スッゲー口説きにかかってるもんなぁー(笑)」

「だって、営業の人達がよく声かけてるんだ。
なんか、不安で……
取られるんじゃないかって!」

「確かに!」
「営業の奴等、タラシが多いもんなぁ」


「━━━━━━乃蒼、告れば?」
「え?」
「俺もそう思う」


「「誰かに取られる前に……!」」

乃蒼は、高敏と千暁の視線を真っ直ぐ受け止めていた。
< 4 / 26 >

この作品をシェア

pagetop