僕は君に毎日恋をする
「そうだったんだ……
大丈夫だよ!
僕がいるからね!
とりあえず、ここ出よう?」
「はい」

安心させるように微笑んだ乃蒼は、手を差し出した。
「手、繋ご?
恋人のフリしよ?」

「あ、はい」
差し出された乃蒼の手を小さく握る。

(わ…手、繋いだだけなのにドキドキする…/////)
乃蒼は羽衣の手をギュッと握り、そのまま引いてコンビニを出た。

案の定、男が後ろからつけてきた。


ゆっくり歩いて、角で曲がる。
タタタッと足音がして、男が駆けてきた。

それを羽衣を背中に隠した乃蒼が待ち構えた。

「え……!!?」
男がびっくりして、後ずさった。

「さっきからなんですか?
彼女に用があるなら、僕が聞きますが?」
鋭い視線で男を睨み付け、乃蒼は淡々と言い放った。

「あ…いや…」

「だったら、もう二度と彼女の前に現れないでください」

「………」

「彼女、ここ最近ずっと怯えてました。
僕の大切な人を、これ以上傷つけないでください」

口をつぐんでしまった、男。
そんな男に、乃蒼は手の平を出す。

「え?」

「━━━━━身分証明書出してください」

「は?」

「免許証でも、保険証でも何でもいい。
とにかく、あなたの身分を証明するものを出してください」

「なんで!?」

「え?だって、この先あなたが彼女に近づかないって保証どこにもないですよね?
だから、何かあった時に必要ですから」

「もう近づかないから、許してくれ!」

「だから!信用できません!」
「あ、あの!西蓮寺さん!」
後ろから乃蒼の服を掴み、声をかけた羽衣。

「ん?ごめんね、もうすぐ終わらせるからね!
怖いよね?」
「私、大丈夫ですから!
もう、帰りましょ?」
「え?でも……」

「本当に大丈夫ですから!」
「………
わかった。
次はないから。
あ、あと!
僕、結構顔が広いんだ!
“色んな”知り合いがいるからね!
わかるよね?」

羽衣の懇願に、乃蒼は男を見据え言ったのだった。


羽衣をコーポまで送った乃蒼。
二人は、ずっと手を繋いでいた。

「西蓮寺さん、ありがとうございました!
本当に、助かりました!」
ペコッと頭を下げる。

「ううん!
僕を頼ってくれて、嬉しかった!」

「え?」
羽衣は、乃蒼を見上げる。

「また、僕を頼ってよ!」


乃蒼は微笑み、真っ直ぐ羽衣を見つめていた。
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