甘くてこまる

「俺から、離れないで」



𓐍
𓏸



「せいら、あくびしてたでしょ。さっき」


「ふぇっ」


「校長先生の話のとき」


「もう、うみちゃんってば、言いがかりはよしてよぅ」


「じゃあ、何話してたか覚えてる? 『人生には3つの坂があります。ひとつ目は上り坂、ふたつ目は下り坂』……みっつ目は?」


「うっ」




なんだそれは。

なぞなぞ?



頭を悩ませるわたしに、親友の “うみちゃん” こと加倉 美海(かくら みうみ)ちゃんは呆れたように笑った。




「ほら、やっぱり聞いてないじゃん」


「眠くなるような話をする校長先生も良くないよ」


「人のせいにしないの」


「むー」





だって、眠かったんだもん。


早起きが祟って、入学式の最中、ずっととてつもない眠気と闘っていた。

慣れないことはするものじゃないな。




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