甘くてこまる
いつになく真剣な声色に息をのむ。
「……〈郁断ち〉する、ってなに?」
郁の指先がそうっとわたしのツインテールにふれて、毛先をするりと絡めとった。
「ちゃんと俺にもわかるように説明してよ。距離を置く、ってどういうこと? なんでそうしようと思った? ……じゃないと、俺、撮影どころじゃない」
撮影どころじゃない、って。
お仕事なんだから、そんな気分次第のわがままはだめだよ。
でも、郁の口ぶりは、わたしがちゃんと説明しないことには本気でお仕事をサボってしまいそうな勢いだし。
それに、わたしだって、もともとちゃんと話すつもりだった。
それは郁が撮影から帰ってきてから……って思っていたんだけど、前倒して、今でもいいかな。