甘くてこまる
コンコン、と窓を小突くけれど返事はない。
さては、まだ眠っているな?
ほんとに朝弱いんだから。
幼なじみとして、もう10年以上一緒にいるけれど、郁がぱっちりすっきり目覚めたところ、見たことない。
仕方ないなぁ、と窓に手をかけるとすんなり開いた。
いつも通り、鍵はかかってない。
防犯的にどうなんだって思いつつ、中に忍びこんで、ベッドにすたすた一直線で向かって。
「郁、朝だよ?」
「……んー」
「いつまで寝てるの……っ」
もこっと膨らんだ毛布のなかでもぞもぞ動いている。
べりっと毛布を剥ぎとると。
「ん……寒」
「郁、起きて」
「んー、やだ、もうちょっと……」
「起ーきーてーっ」
「ぐえっ」
郁のお腹の上に飛び乗ると、潰れたカエルみたいな声が上がる。
なのに瞼は重たく閉じたまま。
すべすべの陶器みたいなお肌の上に、長い睫毛が影を落として、さらにその上に薄茶のさらさらの髪がかかっている。