甘くてこまる
幼なじみだからって、今までみたいにわたしと一緒にいたら、そのリスクは高まるばかりで、危ないよ。
「っ、これはもう決めたことなの。わたし、郁のジャマはしたくないし……郁のこと、応援してるから」
ほんとうは、もっと早く、立場をわきまえるべきだったんだ。
郁はもう、〈芸能人〉 で遠いひと。
ネトフラのドラマきっかけでブレイクし始めた頃から、うすうす気づいていたけれど……幼なじみとしてそばにいた時間が長すぎて、一緒にいるのがあたりまえすぎて、離れるなんて考えられなかった。
だけど、中学校を卒業して、生まれてはじめて進路が分かれて、郁と離れるなら今しかないって。
この機会しかないって思ったの。
それが、春休みの間、たくさんたくさん考えて、わたしがたどり着いた結論だった。
「だからねっ、郁は────」
まっすぐ夢に向かってほしい、って伝えようとしたのに。
「なあ」
遮られる。