甘くてこまる
郁は、ツインテールから離した手で、みずからの前髪をくしゃりと乱した。
「せーらは、それでいいの」
「……?」
「俺と離れて、話さなくなっても、せーらは何も思わないの」
「っ、だって、その方がいいって」
「俺は、よくない」
珍しい。
紘くんに比べて、郁がこんなはっきり白黒つけるような言い方をするなんて。
それも、切実な余裕なげな感じで……。
「よくねーよ。ふつうに、考えただけで無理」
「郁はもっと自分の立場をわかった方がいい……っふゃっ!?」
「わかんない、そんなの」
耳のすぐ近くで、郁の声がする。
ぎゅうっと腕の回る感触がして、抱きしめられているんだと遅れて気づいた。