甘くてこまる
「俺はいーの。でも、せーらは絶対だめ」
「ええ、それって理不尽……」
「今日はたまたま俺だったからよかったけど。悪いヤツが入ってきたら、どうするつもり?」
そうやって、目くじらを立てるけれど。
郁の方がその可能性だって高くて、あぶないんだよ。
名前も顔も知られている〈芸能人〉なんだもん。
そんな特別なひとが隣に住んでいるのに。
「わざわざわたしを狙うひとなんて、物好きだよ。それに、いざってときはちゃんと抵抗するし、警察だって呼べるしっ」
「抵抗できるって? せーらが? 本気で言ってるの、それ」
郁は「信じられないんだけど」って顔をする。
完全にわたしをなめているな、これは。
わたしは、むうっと唇をとがらせて。
「できるもん……っ、わたしそんな非力じゃないよっ」
「ふーん? じゃあ、やってみなよ」