甘くてこまる
そして、昨日それを郁に言ったよね?
だから、わたしはもう今日から郁とは関わらないはずで。
もう郁を起こしに行ったりするのもやめるから、いつも郁の部屋に行く時間分、余裕をもってかけるアラームもわたしにちょうどの時間に設定し直した……はずが、どうして。
朝弱くて、ひとりじゃ起きられないはずの郁がすでにぱっちり目を覚ましているの?
それで、寝ているわたしを起こしに来るなんて。
にわかに信じがたい、逆転現象。
「どうして……」
まじまじと郁を見つめて。
そういえば今日の郁は妙にキラキラしている気が、と不思議に思う。
もう一度頭のてっぺんから、つう、と郁の全身に視線をすべらせて、答えにたどり着いた。
寝ぐせ、ついてない。
スウェット姿じゃない。
着替えも身支度も終えて、目の前にいるのはしゃきっとした完ぺきな〈矢花 郁〉。
ほんとうに信じられない。
いつもの郁なら、この時間はまだ固く目を閉じていて、体を揺さぶったって目を覚まさないはずなのに。
同時に、わたし自身が、完全に寝起きのままの姿だったことを思い出した。
急にぐわっと恥ずかしさがこみ上げてきて、掛け布団のなかにもぐりこむ。
「急になにしてんの」
郁が布団を取り上げようとしてくるから、慌ててさらに奥に隠れた。
「見ないでっ、わたし、寝起きでボロボロだし、髪もボサボサだから……!」