甘くてこまる
寝ぼけていて、寝癖もひどいのに、それも含めて芸術作品みたい。
四六時中一緒にいて見慣れたはずの男の子なのに、こうして改めて近くで見る度、その整った顔立ちにハッとする。
紘くんも格好いいけれど、郁は別格で、比べものにならない。
それもそのはず、郁はわたしの幼なじみだけど、それと同時に〈芸能人・矢花 郁〉でもあるの。
中学2年生のときにスカウトされてデビューした郁は、ネトフラのオリジナルドラマ『17年の嘘』というミステリー作品で主人公の学生時代を演じて、「国宝級イケメン」として話題に。
一躍ブレイクして、今をときめく若手俳優の仲間入り。
特に女の子のなかには熱狂的なファンもいて、「ヤハ様」なんて呼ばれていたりもする。
「郁、起きて?」
いつ見ても、キレーな顔。
それを知っているのはわたしだけじゃない。
矢花 郁は「みんなのもの」。