甘くてこまる
「……ほぇ?」
「考えたんだよな。せーらが、俺ともう話さないとか、起こしに行かないとか、言い出すからさ。だったら、俺がせーらのこと起こしにいけばいいじゃん?ってことで」
「……!? 待っ、昨日のは、そういう話じゃ」
なんにもわかっていない。
伝わってない、と衝撃を受けるわたしに郁は。
「だめだよ。〈郁断ち〉なんて、させてあげない」
有無を言わさずに言葉を重ねる。
「そう簡単に、離れられると思ったら甘いから」
こつん、と額をぶつけてくる。
わたしをとがめるようなそれは、「離れるなんて、ゆるさない」とでも言うようで。
こまってしまう。
「なんで郁は……そんなこと言うの」
郁だって、わかっているくせに。
芸能人の自分と、わたしが一緒にいるべきじゃないってことくらい、わたしに言われなくたってわかっているはずでしょ?
「なんでって────……それは、まだ言わない。秘密」