甘くてこまる
「ひ、みつ?」
意味がわからない。
幼なじみでしょ、今さら隠すようなことなんてなにもないはずなのに。
「とにかく。せーらが俺から離れるっていうんなら、俺は追いかける。せーらが降参するまで」
「ええ……っ」
「本気だから、覚悟してて」
じりじりとにじりよってくる郁に、頭を抱える。
どうしてこんなことに。
なにが、どうなって、郁の変なスイッチを入れてしまったんだろう。
「せいらー!なにしてるの、紘くん待ってくれてるわよー!」
リビングから聞こえてくるママの声に、ハッとする。
わー! どうしよう、いつの間にかもう家を出なきゃいけない時間……!
まだ、起きたそのままの状態なのに!
慌てて制服に着替えようと、パジャマのボタンに手をかけて。
はたと気づく。
「っ、郁、着替えるから出てって……!」
「ははは、気づかないかと思った。ラッキースケベ期待したのになー」
「もー!」
ぐいーっと郁を追い出す。
ふう、ようやく平穏が訪れ……じゃない、早く準備しなきゃ!
バタバタと身支度を終えたわたしは、その間律儀に待ってくれていた紘くんと、息もきれぎれのダッシュで学校に向かい。
高校生活2日目にして、遅刻ギリギリのすべりこみセーフを果たしたのだった。